江戸時代後期、奈良の地に創業した和菓子店萬々堂通則。200年余り、生真面目に、愚直に伝統を受け継いできました。
現在の萬々堂通則の味、形を完成させたのは三代目。
当時からあんの美味しさは特に評判が高く、
今も近隣で開催されるお茶会はもちろん、
東大寺で開催されるお茶会にも供されています。
北海道産の小豆から作ったこしあんに水あめを加えて粘りをだし、
これを小麦粉と卵を練った生地で包んでカラリと油で揚げた素朴でどこか懐かしいお菓子です。
ギョウザに似た形もかわいく、しっかり詰まったこしあんが気持ちまで満たしてくれるようです。
「ぶと」は遣唐使が中国から伝えたとされる唐菓子で、春日大社の神饌(供物)のひとつ。
今も、神事の折には神職が「ぶと」を作ってお供えしています。
春日大社の「ぶと」の形を真似、三代目が春日大社の許可を得て作り始めました。
藤原氏を祀る春日大社の社紋は下り藤。
「ぶと饅頭」の包装紙には、その下り藤が描かれています。
生地作りは日々の天候に左右される繊細な仕事。
薄く延ばし、割れないようにあんを包む作業は気が抜けないといいます。
周りにまぶしたグラニュー糖のクセのない甘さが、口のなかでやさしく広がります。
長い歴史が作ってくれた萬々堂の味を守ることに努めています。
戦後の苦しい時期に、三代目である祖父が伝統を守りながらも
時代を先取りした和菓子作りに励み、今に続く和菓子の土台を作ってくれました。
「ぶと饅頭」も「弓月」も奈良の和菓子の定番として長く親しまれてきました。
素材を厳選するのは当然のことで、小豆、きな粉、砂糖の美味しさをお楽しみください。
(五代目店主河野通輝さん)
なめらかな舌触りのこし餡をカラリと揚げた生地で包んだ、奈良の名店「萬々堂通則」の代表銘菓。春日大社の御祭礼でお供えされている「ぶと」を現代風にアレンジした、奈良ゆかりのお菓子です。