文豪も愛した山里の滋味
歌人・正岡子規が「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」と詠んだように、奈良は柿の木の里としても広く知られています。古くから、五条や吉野地方の家々で、ハレの日のご馳走として親しまれてきた柿の葉ずしは、地元で瑞々しく茂った柿の若葉と、熊野灘から峠を越えて運ばれた鯖や鮭でつくられた山里の名品。その味わいは、文豪・谷崎潤一郎が随筆「陰翳禮讃」において「東京の握り鮨とは格別な味」と評したほどです。
寿司を柿の葉で包み込み、箱に入れて押しをかける手法は、いにしえの時代からの伝統。海のない大和の国では貴重な食材である魚を、保存性にすぐれた柿の葉で包むという先人の知恵が、爽やかな香りがほんのり漂う滋味を生み出したのです。
ほろりと広がる、旨みと清涼感
独自の味付けや伝統の製法も、良質な素材があってこそ。魚、米、調味料それぞれに、ヤマトならではの味わいをつくる秘密があります。
全国のブランド米から厳選し、産地を訪ねて仕入れた、程よい粘度とうまみのある新潟産コシヒカリ。ヤマトのために特別に醸造されたオリジナルの酢をはじめ、保存料や人工甘味料を含まない調味料。鯖は脂がのりがよく身の締まったものを、鮮度を保ったまま冷凍し直送。その切り身を、独自の配合で調味した特製の酢にじっくりと漬け込んで熟成させ、食感とコクを一層引き出しています。
柿の葉の爽やかな香り、一体感のある鯖の身とご飯。口に入れると、さらりとほどけ、鯖の旨みとともに青々しい清涼感が広がります。ボリュームを感じやすい押し寿司なのに、ほろりとした食感、さっぱりとした味わいのおかげか、ひとつまたひとつと手が伸びてしまいます。
- 吉野川や紀ノ川に沿った村々に、古くから伝わる夏祭りのご馳走。柿の葉ずしひと筋に四十余年、私たちは、創業時より一貫して素材を選び抜き、舌を頼りにおいしさを追求してまいりました。昔ながらの製法で、ひとつひとつを丁寧に、手作業で包んでおります。
ふうわりと心地よく香る柿の葉を、そっと開けば大きな具が。ひと口食せば、その豊かな味わいにきっとご満足いただけるはずです。
先人の知恵と、私たちの想いが詰まった古都奈良の野趣を、どうぞ皆様でお楽しみください。
(柿の葉ずしヤマト 代表取締役 宮倉靖幸)
身の締まった新鮮な鯖と新潟産コシヒカリを、昔ながらの製法で丁寧に手包みした柿の葉ずし。ほろりとほぐれ、青々しい清涼感とともに広がる魚の旨み、米の甘みは後をひく味わい。作りたてを当日中に出荷します。