なぜ南伊勢の干物はおいしいのか
三重県伊勢志摩、南伊勢町の五ヶ所湾は、たくさんの入り江が楓の葉のように陸地に深く切り込んでいることから、古くは楓江湾とも呼ばれてきました。内海らしい優美な風景と外海のような雄々しい風景が同じ湾内で見られる風光明媚な地です。
山の養分をたっぷり含んだ水が流れ込む豊穣の海で、四季折々の魚を楽しむことができます。刺身や煮魚など、魚の美味しい食べ方はいろいろありますが、干物にも他の食べ方とは一味違った美味しさがあります。
一般的に魚は死後硬直に入るとイノシン酸やグルタミン酸などの旨味成分が生成され、その後魚の組織の軟化に伴って旨味成分が分解されて美味しさが減少していきます。干物の場合、旨味成分が生成された段階で乾燥させますので軟化が起こらず旨味成分がそのまま保持されるのです。
骨がないから食べやすい
もう一つのおいしさの理由は、食感です。刺身やたたきにした時のシコシコした食感、焼き魚のホクホクした食感、それぞれにおいしさを高めてくれますが、干物の食感の特徴はその弾力感にあります。干物をつくるときに塩を加えたり、味醂干しのように醤油に漬けたりしますが、塩分を加えることで魚の組織が強く結びつき弾力感のある食感をつくり出します。
この「骨なし串ひもの」は、サバ、カマス、カツオ、アジ、ブリを新鮮なうちに1枚1枚手開きし、手で塩をつけ、天日干しを行い、1本1本串に刺した串干物で、魚の腹骨、または腹骨と中骨を丁寧に取り除き、程よく焼き上げています。酒の肴に、またお子様からご年配の方まで、袋から出してそのままお手軽に召し上がっていただけます。
保存料、合成添加物を一切使用せず、高圧殺菌してあり、未開封であれば常温保管もできて安全安心、三重県から「みえセレクション」にも選定された商品です。
- 私は、南伊勢町の小中学校の給食で魚メニューの担当をしていたことがあります。当時は1週間に1度、魚を食べる日がありまして、栄養士の先生から「魚の骨だけはきちんと取り除いてください」と要望がありました。漁師町の子供たちなのに、少しくらいの骨は大丈夫だろうと思っていたのですが、先生からは、少しの骨でも気になってまるっきり食べない子供もいると聞きました。
この話を聞いて漁師町の子供でもこうなんだから、都会の子供や消費者はもっと骨には敏感なんだろうと納得しました。この時に、魚から骨を取り除く方法を色々と考えて今に至っています。
こんな原体験をもとに、地元の魚にこだわり、いい塩を求めて伊豆大島の天然塩「海の精」に出会い、三重県などの補助金も頂きながら、高圧殺菌装置、金属探知機なども導入できて、「骨なし串ひもの」の販売に至っています。
これらの思いや活動を町にも認めて頂き、廃校になった地元の小学校を借り受け、水産加工施設にリフォームできることになりました。地元の魚を使って、地元の人と一緒になって、もっといい商品つくりを行っていきます。
(有限会社山藤 山本藤正)
採れたての魚を港の目の前ですぐに天日干しに仕上げ、骨を取り除いて焼いた干物。そのまま食べられるよう串に刺してご提供しています。酒の肴や、お子様、ご年配の方でも楽しめる、みえセレクション認定商品です。