文化人のサロン的存在であった老舗和菓子店
愛知県豊橋市の中心部。旧東海道沿いにある江戸時代創業の老舗和菓子店若松園は、東海道の賑わいをずっと見つめてきました。明治33年に、「若松園 喫茶部」の名前で向い側にも店を拡張し、ソーダ水やフルーツポンチなど当時としては珍しい洋風のデザートがメニューが並んでいたそうです。戦争で焼失するまで、石造りで中には池がある、文化人のサロン的な存在でした。
井上靖も愛した「黄色いゼリー」
若松園は、手作りのお茶席菓子専門店で、100年以上豊川稲荷の御用達をいただき、上生菓子を作り続けております。文豪井上靖の自伝「しろばんば」に「言葉には表せない美味しさ」と記載のある「黄色いゼリー」は上品な日向夏の生果汁入りゼリーです。井上靖の生誕百年を迎えた際に、井上靖文学館の依頼を受け、「黄色いゼリー」を復活させました。戦災で失ったレシピを、先代から伝え聞いた言葉を頼りに試行錯誤を重ね、日向夏を使った「溶けるように美味しい」味を再現。店舗はもちろん、文学館を訪れるファンに愛され続ける逸品です。
- お菓子作りは誠実さが一番大切だと、代々教え継がれてきました。江戸の昔から続く味を守り抜くためには、惜しまず最高の材料を使い、真摯に菓子作りに取り組む事。これに尽きると思っています。手づくりの和菓子作りは大変手間が掛りますが、仕上がれば喜びもひとしおです。文豪井上靖先生の「言葉では表せない美味しさ」という温かいお言葉をいただいた「黄色いゼリー」を私どもは大切に大切に皆様に伝承させていただくことは大変幸せな事でございます。一つ一つ手作りで丁寧に作らせていただきます。(有限会社 若松園 代表取締役社長 山田亨司)
文豪井上靖の自伝「しろばんば」に登場する上品な日向夏の生果汁入りゼリーです。「言葉には表せない美味しさ」と記載のある、溶けるような味覚。