お歳暮の熨斗(のし)の意味・書き方・注意点を解説
日頃お世話になっている方に贈るお歳暮。今年は何を贈ろうか、何を贈ったら喜んでもらえるか、先様の家族構成や嗜好などを考えて選んでいることと思います。同時に、感謝の気持ちを伝えるためには、品物だけでなく贈る際のマナーも大切です。
そこで、お歳暮を贈る際ののし紙の選び方や書き方、注意点についてお伝えします。お歳暮を受け取る側に気持ちよく心から喜んでもらえるように、ポイントをしっかり押さえておきましょう。
お歳暮ののし紙の選び方
初めに、お歳暮ののし紙の種類や選び方など、基本的なことからご紹介します。
水引は紅白の蝶結び
水引はのし紙につける飾り紐のことで、紐の色と結び方でそれぞれ意味が異なります。
その中でお歳暮用に使われるのは「紅白の蝶結び」。紅白の水引は慶事に用いられ、蝶結びは何度でも結び直せることから出産など何度繰り返してもおめでたいご祝儀や慶事、お礼などに用いられるので、この組み合わせはお歳暮やお中元に使用されます。
ちなみに、同じ紅白でも「結び切り」は結婚や病気の快気祝いなどの一度きりであってほしいお祝い事に、白黒の「仏のし」は二度と繰り返したくないお悔やみ全般に使われます。
熨斗(のし)は基本的につける
贈り物をする際に、のしをつけた方がいいのか迷ったことはありませんか? また、お歳暮の品を購入する際に「のしはどうされますか?」と聞かれ、なんとなくつけていたという方も多いでしょう。ですがお歳暮の場合、基本的にのしはつけるものと覚えておきましょう。
そもそも「のし」とは、のし紙についている小さな飾りのことで、古くからおめでたいものの象徴として贈り物に添えられていたアワビ(のしアワビ)が由来となっています。室町時代、のしアワビは祝い事や出陣の際に行う「三献の儀」に欠かせない肴のひとつでした。そのアワビがのし紙についている飾りの中の黄色い紙の部分で、その周りが「のし飾り」と呼ばれています。つまり、「のし」と「のし紙」は似ているようですが、正式には別のもので、のしのついた掛け紙が「のし紙」なのです。
現代では簡略化されて、水引やのしが印刷された「のし紙」を使用するのが一般的ですが、贈り物に掛けるのし紙は、紅白の5本または7本蝶結びで右上にのしが付いた、通称「花結び祝い」と呼ばれるものを使いましょう。また、のし紙をかけた際に品物の裏側で重ねる場合には、品物の裏側から見て右が外側になるように重ねます。逆の場合は弔事の巻き方になってしまうので注意してください。
内のし・外のしの使い分けについて
のし紙のかけ方には、内のしと外のしの2種類があります。
内のしは品物にのしをかけ、その上から包装紙で包む方法で、控えめにお祝いしたい場合や郵送で贈る場合に多く用いられます。配送時のダメージによるのし紙の破損を防ぐ意味でも効果的です。また、外のしは包装紙の上からのしをかける方法で、贈り物を強調したい場合や直接訪問して渡す場合に多く用いられます。
最終的には贈り物にのし紙をかけることが大切なので、その使い分けに厳密な決まりはありませんが、地域による慣習の違いなどもあるため、贈り物を購入する際に周りの方に聞いてみるなど事前に確認しておくとよいでしょう。
短冊のし(簡易のし)も可
最近では、紅白の水引で蝶結びが印刷された短冊のしも多く使われており、通常ののしよりも面積が小さいため贈り物の右上に貼って使用します。贈り物をぐるりとくるむ通常ののしに比べると簡易的なものではありますが、決して失礼にあたるということはありません。
お歳暮ののし紙の書き方
次に、のし紙の表書きと名前の書き方をお伝えしていきましょう。
表書き
まず、上部中央に「お歳暮」もしくは「御歳暮」と書きます。ただし、何らかの事情で発送が遅れてしまった場合、1月7日までに贈る場合は「お年賀」または「御年賀」、さらにその後なら「寒中御見舞い」と書きましょう。
お歳暮を贈る時期は、関東では12月初旬〜12月31日、関西では12月13日〜12月31日などと地域によって多少の差はありますが、12月上旬から年末までであれば一般的な範囲です。そのため、12月31日を過ぎてしまった場合は「お年賀」で贈るということになります。
また、理想的なタイミングとしては、年越しの準備で慌ただしくなる12月20日くらいまでとされていますが、お正月に使うための生鮮食品を贈る場合は鮮度の問題も考慮して、できるだけ遅めに到着するような気遣いも必要です。
そしてのし紙の下段中央には、表書きより少し小さめの字で贈り主の名前を書きます。最近はマジックペンなどで書く方も増えていますが、本来は毛筆か筆ペンを使い、楷書体で丁寧に書くのが正式なマナーとされています。
個人で贈る場合の名入れ
個人で贈る場合はフルネームを書くのが一般的です。ただし、目下の方に贈る場合は名字のみでもよいとされています。
夫婦など連名で贈る場合の名入れ
夫婦などの連名で贈る場合には中央下部に並べて書きますが、右から目上の順番にしましょう。なお、一般的に連名で書くのは3名までとされており、それ以上の人数の場合は代表者名のみを書きます。
代表者名のみ書いて複数人で贈る場合の名入れ
4名以上で贈る場合には、連名ではなく代表者名を書きます。まず代表者名を中央下部に書き、その左下に「他一同」と書き添えます。そして中包みに代表者以外の名前を並べて書きましょう。
法人で贈る場合の名入れ
法人で贈る場合には、代表者名を中央下部に書きます。もし会社名も添えたい場合には個人名の右上に小さく書きましょう。
お歳暮ののし紙の注意点
最後に、お歳暮にのし紙をつける際の注意点をお伝えします。
海産物を贈る場合
贈り物の品が海産物の場合、のしはつけないのが一般的です。そもそものしはアワビの代用品として添えるものですので、海産物を贈る場合にはのしは必要なく、この場合は水引だけの掛け紙を選びましょう。なお、表書きや名前は通常通りに書きます。
自分、もしくは贈る相手が喪中の場合
お歳暮を贈る自分側や贈られる相手側が喪中の場合、贈ることそのものが失礼にならないか悩むこともあるでしょう。ですが、お歳暮はお世話になっている方へのお礼なので、基本的には喪中でも差し支えありません。ただし、のしや水引にはおめでたいという意味合いがあるため使用せず、白無地の奉書紙か短冊に表書きと名前を書くようにしましょう。もし年内に贈り逃した場合には、松の内(一般的には年明けから1月7日まで)を過ぎてから「寒中御見舞」として贈ります。
また、忌中の場合は香典の意味合いが強まってしまうため贈る時期をずらし、忌明け後(四十九日以降)にしましょう。忌明け後まで待っていたらお歳暮の時期を逃してしまうという場合には、松の内が明けてから寒中見舞いとして贈ります。
丁寧に相手への感謝を伝えることが基本的なマナー
お歳暮を贈る際には紅白蝶結びの水引ののし紙をかけ、表書きと名前は丁寧に書き、お相手に対する感謝の気持ちを伝えることが基本的なマナーです。できる限りお歳暮を贈るタイミングは逃さず、もしも逃してしまった場合は時期によって「お年賀」「寒中御見舞い」を正しく使い分けるようにしましょう。そして、また翌年もお相手との良い関係が続くように心をこめて、お歳暮の品選びを楽しんでみてください。