2016/5/26

「工芸品特集」〜やきもの編〜

 いいもの探訪では、JR東海沿線の美味しい食べ物だけではなく、地域の歴史や文化、職人の技が感じられる様々な工芸品もご紹介しています。
 今回の“いいもの特集”は工芸品、その中でも「やきもの」をテーマにお届けします。食器や花入れ、茶道具など、日々の生活に彩りや上質な幸福感を与えてくれる「やきもの」に纏わるストーリーをお楽しみください。

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瀬戸

「瀬戸焼」

 愛知県瀬戸市周辺は、六古窯として常滑・信楽・越前・丹波・備前と並び称される、瀬戸焼の産地として知られ、その始まりには諸説ありますが、概ね1,000年前後の歴史があるといわれています。「やきもの」に適した良質な粘土に恵まれ、中世唯一の施釉陶器である古瀬戸をはじめ、様々な陶器が全国的に人気を博し、特に東日本においては、陶器の代名詞として「せともの」と呼ばれるようになっていきました。

「瀬戸染付焼」

 1800年頃に瀬戸の窯元の次男として生まれた加藤民吉が、苦労の末、肥前の磁器の焼成技法を習得し、瀬戸の地に根付かせました。白地の素地に絵付を行い、施釉後に焼成した瀬戸染付焼の誕生以後、陶器、磁器ともに瀬戸のブランドとして確立していきました。

瀬戸染付焼

体験スポット「瀬戸蔵ミュージアム」

 須恵器などを生産していた平安時代から瀬戸で陶器の製法を根付かせたとされる「陶祖(瀬戸焼の開祖の意)」加藤景正(藤四郎)の時代、「磁祖(瀬戸に磁器の製法を伝えた意)」加藤民吉の時代、以降現代にいたるまで、瀬戸焼の歴史を俯瞰しつつ、展示を楽しめます。

体験スポット「瀬戸蔵ミュージアム」

美濃

「美濃焼」

 岐阜県土岐市、多治見市などの美濃地方の窯を中心に製造される美濃焼は、安土桃山時代に千利休、古田織部といった数々の茶人に愛されて隆盛を迎え、現在でも志野、織部、黄瀬戸をはじめとするバリエーションに富む技法により生み出された「やきもの」を楽しむことができます。
 幕末には、白くて硬い磁器の生産もはじまり、今では和食器の全国生産の約60%以上を占める陶磁器の産地となっています。

  • 「美濃焼」01
  • 「美濃焼」02

体験スポット「幸兵衛窯作陶館」

 1804年に開窯された幸兵衛窯では、正倉院三彩の技法を復元するなどの功績により人間国宝に認定された六代目加藤卓男氏の作品を含め多数の陶磁器を見学できます。また「幸兵衛窯作陶館」では、自分だけの織部や黄瀬戸の茶碗を作ることができるなど様々な体験を楽しめます。
 隣接する市之倉さかづき美術館では、多数のめずらしいさかづきを見学することもできます。

体験スポット「幸兵衛窯作陶館」

伊賀

「伊賀焼」

 鎌倉時代に本格的な生産が始まったとされる伊賀焼は、山ひとつ隔てた産地である信楽焼と同じ古琵琶湖時代の陶土を使用していたことや陶工の行き来もあったことから、関係が深かったと言われています。
 茶の湯の流行した安土桃山時代を中心に茶陶の水指や花入れなど数々の銘品を生み出した歴史もありますが、現在は多孔質の粗土や蓄熱力の高さといった特徴を活かして、土鍋や土瓶といった食器を中心に生産されています。

「伊賀焼」

体験スポット「長谷園 作陶体験」

 1832年に創業した伊賀焼窯元長谷園では、伊賀焼の作家が丁寧に指導してくれる陶芸教室を行っており、国の登録有形文化財として指定された登り窯や数々の建物に囲まれたノスタルジックな雰囲気の中、作陶を楽しむことができます。

体験スポット「長谷園 作陶体験」

高山

「渋草焼」

 江戸時代後期の1841年に、江戸幕府の天領(直轄地)であった高山の代官の殖産興業政策として半官半民の陶磁器製造所が開窯されたのが渋草焼の始まりです。瀬戸、九谷の職人が招聘され、地元の良質な陶石が使用される中で飛騨九谷、飛騨赤絵と呼ばれる優れた作品が生み出されてきました。
 現在に続く窯元芳国舎では、透光性のある磁器の特徴を活かした「内外菊茶呑茶碗」など、手描きの絵付けにこだわった製品を生産しています。「内外菊茶呑茶碗」は外側と内側の模様が位置をできる限り合わせて描かれ、光に透かすと模様がくっきりと浮き出されます。芳国舎では、飛騨高山の魅力を多くの方に知って頂くため陶房や職人技、周辺地域の名所等、希望に合わせて案内する取り組みも行っています。

「渋草焼」

編集後記

日本人にとって「やきもの」は、古くから生活に寄り添うものとして親しまれています。
作品自体に魅力があるのはもちろんですが、それぞれのストーリーを知ったうえで作品に触れると、よりいっそう魅力的に感じます。今回の取材を通して、古くから現代まで伝わるものには、選ばれる理由があるということを改めて感じました。
今回ご紹介した各窯元には体験スポットもあり、気軽に「やきもの」に触れることが出来ます。職人の技を見学するのも、実際に土に触れて自分の作品を作るのもおすすめです。
テーブルに彩をそえてくれる「やきもの」。私も作陶体験や見学に出かけてみたいと思います。

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