今食べたい、駿河グルメ!!【静岡県静岡市】

徳川家康が生涯で3度も過ごした地、駿河。
わさび漬に、抹茶ジェラート、静岡おでんなど、
駿河グルメ満喫の旅へ!

ほがらかな女将の接客に気持ちがなごむ
「静岡おでん おがわ」にて

風味絶佳のわさび漬が生まれるまで

全国津々浦々、さまざまな記念碑が立っているが、こちらはなかなかどうして。ずいぶんと強烈ではないか。「わさび漬発祥の地」の碑である。徳川家康ゆかりの駿府城跡に整備された、駿府公園の中堀に沿う小道に、巨大なわさびがドンッと鎮座する。

わさびといえば、日本を代表する香辛料。WASABIの名で世界に通用する“和ハーブ”だ。
栽培は江戸時代にさかのぼり、安倍川流域の静岡市有東木〔うとうぎ〕地区(現葵区)が始まりといわれている。静岡は北部の3,000メートル級の山々に水源を持ついくつかの川が縦に走り、南の沿岸に流れ込む地形だ。しぜん安倍川流域にもミネラルを含んだ水が豊富で、良質なわさびが育つ要件が整っている。

昔から、そこで食されていた「わさび茎のぬかみそ漬け」が、今日のわさび漬のルーツなのだとか。あるとき行商人がこの漬物に工夫を凝らし、塩漬けして細かく切ったわさびに酒粕を混ぜて食したそうだ。クセになるおいしさは辺りに広まり、時代が下るとこれを商品化して、「わさび漬」と命名したのが始まりとか。刺身やそばに添えられるだけと思っていたわさびにも、ずいぶんと長い歴史があるようだ。

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長らく愛されてきたわさび漬は、どんなわさびを使って作られているのだろうか。この目で見てみたいと、田丸屋本店にお願いした。田丸屋本店は1875年(明治8)から140余年にわたり、漬物を作り続ける老舗だ。
まずは、静岡市街から車で30分の場所にあるわさび田に案内してもらう。安部川上流の俵峰〔たわらみね〕地区に広がる自社管理のわさび田は、ひんやりと澄んだ空気と、とめどなく流れる水音に包まれていた。

清流を引き込んだ段々畑に、青々としたわさびの葉が重なりあっている。家康は、葉の形が徳川家の家紋である葵にも似ているわさびの風味をとても気に入った。だからこの時代、わさびは門外不出にもなったと伝わる。天下人をも魅了した、わさび。この澄んだ清流と空気の中で育ったわさびは、きっと清らかな味に違いない。葉はつやつやとして茎は瑞々しく、いかにも風味が良さそうだ。そんなわさびが主役となるわさび漬の味わいに、おのずと期待が高まってくる。

  • ① わさび漬発祥の地の碑。駿府城公園入口の二の丸橋近くにある
  • ② 初冬の駿府城公園で色づくミカンは、隠居時代の家康が手植えしたと伝わる
  • ③ 安倍川上流にある田丸屋本店のわさび畑。清流に育まれたわさびの葉が目にまぶしい

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清冽な水辺に生えるわさび田を見学したあとは安倍川下流域に移動し、いよいよ、わさび漬を作る田丸屋本店の工場へ。ここで、わさびの根と茎を刻んで塩漬けにした後、酒粕や調味料と練り合わせ、わさび漬に仕上げていく。
最終工程である容器への充填と包装作業は、誰でもガラス越しに見学できる。ちょうど、看板商品の一つである「金印わさび漬」が容器に詰められていた。円形のプラスチック容器は、よく見れば4分割されている。個別に封をすることで、本来の味を長く保つひと工夫。ほかにも、わさび漬を食べきりサイズのミニカップに詰めたり、おろしわさびをチューブに入れるようすを見ることができて、工場見学を楽しめた。
ひと口味見をさせてもらうと、ツーンとくるかと思いきや、想像を裏切って、まろやかさとうまみに舌が喜ぶ。半年かけ、じっくりと熟成させた酒粕が新鮮なわさびの辛みをほどよく包み込んでいるのだ。
営業部長の和田健司さんいわく、「使う酒粕は一定期間寝かせて、まろやかに仕上げてから使っています。ピリッと辛いわさびを酒粕においしく馴染ませるためですね」。
なるほど、辛いだけではない、風味絶佳のわさび漬は、細やかな工夫によって生まれていたのだ。

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最後に、田丸屋本店の顔ともいえる、JR静岡駅近くの直営店をのぞいた。店名を白く染め抜いた青い暖簾が風にはためいている。店頭では、先ほど工場で見た金印わさび漬をはじめ、ウニ入りや数の子入りなどのわさび漬を量り売りしている。

定番のわさび漬の隣には、カマンベールチーズを加えた洋風わさび漬もある。チーズを入れるなんて斬新だが、ほんのりとした塩気とコクが加わり、クラッカーにも合いそうだ。ほかにも、わさびとしらす入りの食べるオリーブオイル、わさびと酢を利かせたふりかけなど、新しいスタイルのわさび製品がずらりと並ぶ。なんと、わさびテイストのソフトクリームまであった。
わさびがこれほどさまざまな食材を辛味で引き立てるとは。しかも口中が爽やかに更新されるから、ついついあとを引いてしまう。わさびのおいしい可能性にふれたひと時だった。田丸屋本店は、他社とは一線を画す、独自の味づくりに励んでいる。

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  • ④ 愛らしいわさびの花。春の初めに咲くが、取材時(12月)にもうっかり開花していた
  • ⑤ 4分割に小分けされた金印わさび漬。ちょっとだけ楽しみたい時に便利
  • ⑥ 次々と、無着色、無香料のおろしわさびがチューブに詰め込まれていく
  • ⑦ ミ二カップ入りのわさび漬。お試しサイズとして好評だ
  • ⑧ 静岡の繁華街に位置する田丸屋本店。入口横の石碑に、作家・岡本かの子が著書でこの店について記した一節が刻まれている
  • ⑨ 6種類のわさび漬を量り売りしてくれる。少量ずつ食べ比べてみてはいかが
  • ⑩ 左から、ご飯がすすむふりかけ「Wasabi Furikakeっ酢〔す〕」、ワインに合うわさび漬「CHEESE WASABI」、食べるオリーブ油「UMAMI OIL」

驚きの抹茶ジェラート 想像超えの味に大満足

駿河グルメを語るとき、やっぱりお茶は外せない。今回は、ひと味変わった趣向でお茶を楽しませてくれるスイーツショップを訪れた。老舗の製茶メーカーが手がける「ななや 静岡店」は田丸屋本店(紺屋町田丸屋本店)から徒歩で5分ほど。抹茶を使ったジェラートが人気を博している。ほのかに抹茶が香るNo.1から、“ありえないほど”濃いプレミアムNo.7まで、抹茶の濃さは7段階。No.5ですでにガツンと苦みを感じるというだけに、プレミアムNo.7の味わいたるや。

ドギマギしながらも、最も濃い味を選択した。器にこんもりと盛られたプレミアムNo.7は、抹茶色としかいいようのない深い緑色だ。そっとスプーンで口に運ぶと、まさに抹茶そのもの! スイーツらしからぬ苦みにひと口目はとまどったものの、ジェラートの甘さも感じるし、ふた口、み口と食べ進めるうちに、なんだかクセになってくる。日本人が大好きな濃いお茶の味が、なめらかなミルクのおいしさとあいまって、幸せな気分になる。
極上の抹茶だからこそ実現したジェラートは、スイーツの常識を見事に打ち破っていた。

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  • ⑪ 静岡の抹茶を広めたいと丸七製茶がプロデュースしたスイーツショップ「ななや 静岡店」
  • ⑫ 話題の抹茶ジェラート、プレミアムNo.7。まさに大人のスイーツだ

ご当地ネタも豊富!「ただいま」と言いたくなる静岡おでん屋

だんだんと日が暮れ、温かいものが食べたくなってきた。
となれば、やっぱり静岡おでんだ。お国自慢のB級グルメで、寒い季節はなおのこと恋しくなる。静岡浅間神社の参道にある「静岡おでん おがわ」は、いかにも昭和の食堂といった店構えで、中に入るとアツアツおでんの匂いに満ちている。

静岡おでんの特徴は、なんといってもあの黒いだし。この店では、牛だしに醤油だけのシンプルな味つけにしている。毎日これを鍋に継ぎ足しながら、うまみのある練り物を煮込み続けた色と味は、70年続く店の歴史そのものだ。グツグツと煮える鍋には、駿河湾でとれたイワシをすり身にした黒はんぺん、しらやき(魚のすり身の素焼き)、しのだまき(魚のすり身を油揚げでくるんだもの)といったご当地ならではの練り物をはじめ、約20種類のネタが串刺しでスタンバイ。

注文すると、青のりとカツオの削り粉をふりかけて運んできてくれる。だしが黒々としているだけに、さぞかしパンチが効いているかと思いきや、拍子抜けするほどにやさしい味わい。しっかりしみ込んだだしのうまみが際立っていた。やわらかな牛すじ、もっちりとした黒はんぺん、ほくほくのじゃがいも。手ごろな値段で味わえ、あれもこれも挑戦したくなるが、そこはお腹と相談を。

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3代目の女将が家族とともに切り盛りしていて、アットホームな雰囲気。昭和にタイムスリップしたような昔ながらの店内も心地いい。普段から客足が絶えない店だが、正月は夜通し営業し、初詣帰りの客で大賑わいなのだとか。この時期、年一度の里帰りに立ち寄るという人も多く、ふるさとにこんなおでん屋がある静岡っ子がちょっぴりうらやましく思えた。

  • ⑬ 昭和の趣にほっこりする店内。夕食時は、持ち帰り用に鍋や大皿を持って近所のおなじみさんがやってくる
  • ⑭ ほがらかな女将の接客に気持ちがなごむ
  • ⑮ 左から黒はんぺん、大根、牛すじ、しらやき、玉子。だしを皿に入れないのも静岡風
  • 田丸屋本店(直営店)

    ☎ 054-254-1684
    静岡市葵区紺屋町6-7

    時間:
    10時〜19時
    休日:
    無休(1月1日を除く)
  • ななや 静岡店

    ☎ 054-251-7783
    静岡市葵区両替町2-3-1

    時間:
    11時〜19時、12月31日は17時まで、1月3日は18時まで
    休日:
    水曜(祝日の場合は営業)、1月1日〜2日
  • 田丸屋本店(工場見学)

    ☎ 054-256-1188
    静岡市駿河区下川原5-34-20

    時間:
    9時〜17時(直売所「STEP IN たまるや店」は19時まで、12時〜13時は製造ラインが停止)
    休日:
    無休(1月1日を除く) *見学無料、予約不要
  • 静岡おでん おがわ

    ☎ 054-252-2548
    静岡市葵区馬場町38

    時間:
    10時〜18時30分(ネタがなくなり次第終了)
    休日:
    水曜

編集後記

今回の特集記事は「いいもの探訪」と、東海道新幹線沿線の観光情報を集約したサイト「Japan Highlights Travel」、東海道沿線の良質な情報を提供している雑誌「ひととき」が共同で企画、制作しました。

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田丸屋 根わさび・わさび漬セット

田丸屋熟練の職人の目で厳選したわさびを使った金印わさび漬、新鮮な粒うにとわさび漬を練り合わせたうにわさ、直営のわさび田できれいな水に育てられた香り豊かな新鮮なわさびを詰め合わせたセットです。

  • 3,000円(税込)
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    ※写真・イラストは全てイメージです。

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