元気が出る名古屋旅― 旨い養殖食べ歩き【愛知県名古屋市・西尾市・豊橋市】

愛知の旨いものに、最近、養殖魚が加わった。
絹姫サーモン、ウナギ、アユ・・・・・・味はピカイチ、生産量でも他を圧倒。
国内最大級のおもしろ商店街・大須を歩き、おいしい養殖文化探訪の旅へ。

石原基次さん(右)と、30年近く大須に暮らすアメリカ出身の大須案内人、カーター・スティーブンさん

“ごった煮”が楽しい巨大な大須商店街

どうやら愛知県は内水面(淡水)養殖が強いらしい。よく知られているのがウナギで、全国2位の生産量を誇る。アユにいたっては1位に輝く。ここにきら星のごとく新ブランドが加わった。絹姫(きぬひめ)サーモンだ。この愛らしくも耳なじみのない魚が名古屋市内の飲食店で食べられると聞きつけ、興味津々やってきた。

せっかく名古屋を訪れるなら、国内屈指の元気な商店街、大須商店街に立ち寄るといいと教えてもらった。大須2丁目から3丁目界隈の商店集積地のことで、地図を広げると縦横無尽に大小の通りが延びていて複雑。ここはひとつ“助っ人”の力を借りるほうが町歩きを満喫できそうだ。

と、その前に腹ごしらえを。喫茶店がひしめく名古屋にあって、1947年(昭和22)創業のコンパルといえば、その草分け的存在だ。大須本店のドアを開けると、昭和にタイムスリップしたかのようなレトロな雰囲気。気になるメニューは数あれど、名物だというエビフライサンドとアイスコーヒーを注文した。ところが、テーブルに置かれたのはホットコーヒー。聞けば隣に添えられた氷入りのグラスに勢いよく注いで味わうのだとか。エビフライサンドはプリッとしたエビフライ、玉子焼き、コールスローを、こんがり焼いた食パンで挟んである。コクのあるタルタルソースが個性的な具材をまとめ上げて、一切れ、もう一切れと手がのびてしまう。

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お腹が満足したところで「大須おみやげカンパニー」の石原基次さんと合流。商店街には週末のボランティアガイド「大須案内人」が15人ほどいるが、頭に手ぬぐいをキュッと巻いて登場した石原さんはそのOB。大須生まれの大須育ちだ。

「大須はごった煮の街と呼ばれているんですよ」と石原さん。老舗の菓子処に家電店、サブカルチャーの雑貨店、古着店、多国籍料理のレストラン……。さらに由緒ある神社仏閣や、大須演芸場まで。純喫茶もあれば、メイド喫茶もある。多種多様な1200もの店舗や施設が混在しつつも調和し、街は活気にあふれている。

まずは商店街の西側入口にある大須観音にお参り。寺号は北野山真福寺寶生院(ほうしょういん)というが、大須観音の名で親しまれている。境内で1日5回上演されるからくり人形「宗春(むねはる)爛漫」には、芸どころ名古屋の基盤をつくったといわれる、尾張徳川家藩主・徳川宗春のほか、きらびやかな山車(だし)や花魁(おいらん)なども登場し、その豪華さに思わず見入ってしまう。

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商店街のなかには古墳まであった。今では高さ3メートルほどの円墳状にしか見えないが、約1500年前にできたと推定される前方後円墳、那古野山(なごのやま)古墳である。
ほかにも、徳川家や織田家ゆかりの寺社など、歴史ファンにはたまらないスポットも点在する。

と、ありとあらゆる店が林立する商店街にあって、とくに個性が強い通りに出くわした。仁王門通りはういろうで名高い青柳総本家の本店や大須ういろ本店といった歴史ある老舗が並んでいる。そのなかの1軒に1921年(大正10)創業の手焼きせんべいの店、朝日軒があった。店舗の奥で作られる昔ながらの玉子せんべい1枚1枚に、アユや桜、モミジなど風物詩の焼き印が押してある。焼きたてをいただくと、素朴で懐かしい味がした。

同じ通りにある新雀本店では、店先で焼くみたらし団子に人だかりができている。40年以上継ぎ足しているという醤油ベースのタレをつけては焼きを繰り返す。ほどよい焦げめが香ばしく、ペロリと平らげてしまった。

とりわけ食べ歩きが楽しいのは東仁王門通りだ。タイ、ベトナム、インド、ネパール、トルコ、イタリア、ブラジルなど、インターナショナルな顔ぶれ。李さんの台湾名物屋台本店はその名のとおり、台湾のファストフードが気軽に食べられる店。ピリッと辛い台湾唐揚げやタピオカがゴロゴロ入ったミルクティを味わいながら、しばし休息。

石原さんといっしょに町歩きをしてはや3時間。お腹も満たされ、あっという間に時間が経ってしまった。まだ訪れたことがない人は、一度「ごった煮の街」をとことん体感してほしい。

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  • ① 名古屋の喫茶店を代表する、喫茶コンパル大須本店
  • ② 石原さんご夫婦が切り盛りする、みやげ店「大須おみやげカンパニー」
  • ③ これは必食。コンパル大須本店のエビフライサンドとアイスコーヒー
  • ④ 繁華街のエアポケット、那古野山古墳。石原さんはなぜかたぬき山と呼んでいた
  • ⑤ 福を呼んでくれそうな新彫金マグネット。大須おみやげカンパニーにて
  • ⑥ 大須観音として知られる北野山真福寺寶生院。取材の間も訪れる人が絶えない
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    懐かしの手焼きせんべいを売る朝日軒

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    焼き印の種類が豊富で、好みのデザインで注文できる

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    老若男女に根強い人気の新雀本店。みたらし団子のほか、きなこ団子もある

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    商店街で見つけたかわいいハワイアン調のグァバジュース

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    仁王門通りに連なる東仁王門通り

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    李さんの台湾名物屋台本店の台湾唐揚げ。ボリューム満点!

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    東仁王門通りで突如現れる「箪笥(たんす)のばあば」。触ると着るものに一生困らないのだとか

未体験のおいしさ 絹姫サーモンの秘密

名古屋観光を満喫した後は、いよいよ絹姫サーモンとのご対面。この魚にほれ込み、大プッシュしている人物をたずねて地下鉄大須観音駅から2駅東の鶴舞駅へ。魚の卸売りと飲食店を手がける寿商店に向かった。

出迎えてくれたのは常務取締役の森朝奈さん。幼少のころから魚が大好物で、家業に入ったという。「初めて口にしたとき、もっちりした食感と上品な脂のりに感激しました」と森さん。百聞は一食にしかずとばかりに、さっそく併設の「魚屋の台所 下の一色本店」で刺身をいただくことに。口あたりのよい肉質で旨味が濃く、養殖魚にありがちな脂臭さがない。なるほど、従来のサーモンとは違ったおいしさだ。

じつは、この絹姫サーモンは12年の歳月をかけて開発されたブランド淡水魚なのである。奥三河の山間部、澄みきった清流に愛知県淡水養殖漁業協同組合の養殖場が設けられている。

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父はサケ科でもっとも美味といわれるアマゴ、母はニジマス特有の斑点がなく、身色が美しいホウライマス。これらの長所をかけ合わせ、徹底した水質管理のもとで飼育された絹姫サーモンは、寄生虫の心配がなく、安心して生のまま食べられる。「まさに虫のつかないお姫さまなんですよ」と森さん。

寿商店が展開する7店舗では刺身やにぎり寿司、低温の煙でいぶしたスモークサーモンやそのカルパッチョが味わえる。地元のみならず、全国にこのおいしさを広めていきたいと森さんは熱く語ってくれた。

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一色ウナギを香ばしい蒲焼に

愛知県の内水面養殖で絶対王者といえば、ウナギだろう。県内でも西尾市一色町は古くからの産地。出向くと田園風景のなか、あちらこちらにビニールハウスが立っている。果物栽培かと思いきや、これらがウナギの養殖場だった。そのなかの1軒、独自のスタイルで半世紀にわたり、ウナギを育ててきた長坂養鰻場を訪ねた。

代表の長坂和徳さんのモットーは「ウナギにとって限りなく自然に近い“寝床”をつくりだすこと」。ハウス内の池に入れる土は、ミネラル分の多いもの、鉄分を含むものなどを厳選し、天日干しにして殺菌した上で池底に敷き詰めている。また、ウナギが吸収し養分の抜けた土を5年ほどの周期で入れ替えるのも大切な作業だという。

20棟ある加温式のハウスに入らせてもらうと、室温はほぼ30℃。ムンとする熱気に包まれている。エサを与え始めて115日目のウナギが暗い池のなかからニョロッと顔をのぞかせていた。国産のシラスウナギを成長が早いものでも200日ほどかけ、じっくりと脂がのるまで育てている。

そんな長坂養鰻場が手がける高品質のウナギを一手に加工しているのが、豊橋に工場を構えるカネナカだ。1、2日かけて泥抜きをし、臭みを抜いてから包丁でさばく。まずはパリッと皮を焼き、次に腹側を強火で焼くと、いい匂いの白焼きができ上がる。ここから先は蒲焼きの工程だ。高温で蒸し、地元のたまり醤油をベースにしたタレに4回漬け焼きすれば、茶色に照り輝く香ばしい蒲焼きがお目見えする。コクのあるタレが絡むふっくらとしたウナギは、食欲をそそること間違いなし。ごはんが何杯でも進みそうだ。

噂に違わぬ愛知県の養殖の底力。うれしい驚きに満ちた旅だった。

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  • ⑦ 愛知県設楽町の風光明媚な山間にある寿商店のサーモン養殖所
  • ⑧ 森朝奈さん。スモークサーモンの開発を指揮した
  • ⑨ 下の一色本店で食べられる絹姫サーモンの刺身とにぎり寿司
  • ⑩ カネナカのウナギを取り寄せれば、自宅で最高級の蒲焼丼やウナ茶漬が楽しめる
  • ⑪ 長坂養鰻場の長坂和徳さんのご子息・英徳さん(左)、カネナカ社長の中村貴洋さん
  • ⑫ 脂がのるまで成長したウナギ。一色の各養鰻場では矢作川水系の清流を利用している
  • 案内図 元気が出る名古屋旅 旨い養殖食べ歩き
  • アクセス

    大須商店街へは、東海道新幹線名古屋駅から名古屋市営地下鉄東山線で栄駅へ、名城線に乗り換え上前津駅下車。または、中央本線で鶴舞駅へ、鶴舞線に乗り換えて大須観音駅もしくは上前津駅下車。

  • 観光に関する問い合わせ

    【名古屋観光コンベンションビューロー】☎ 052-202-1143
    【大須商店街連盟】☎ 052-261-2287

案内図
  • 喫茶コンパル 大須本店

    ☎ 052-241-3883
    名古屋市中区大須3-20-19
    時間:8時〜21時 休日:無休
    *モーニングサービスは8時〜11時

  • 大須おみやげカンパニー

    ☎ 052-228-0267
    名古屋市中区大須2-18-20
    時間:10時〜18時
    休日:水曜(ただし祝日と8の付く日は営業)

  • 北野山真福寺 寶生院(大須観音)

    ☎ 052-231-6525
    名古屋市中区大須2-21-47

  • 朝日軒 観音店

    ☎ 052-231-5233
    名古屋市中区大須2-18-47
    時間:8時30分〜19時
    休日:水曜(祝日、縁日の場合は木曜)

  • 新雀本店

    ☎ 052-221-7010
    名古屋市中区大須2-30-12
    時間:13時〜19時 休日:不定休

  • 李さんの台湾名物屋台 本店

    ☎ 052-251-8992
    名古屋市中区大須3-35-10
    時間:12時〜20時(土・日曜、祝日は11時〜)
    休日:不定休

  • 魚屋の台所 下の一色本店(寿商店併設)

    ☎ 050-5869-1037
    名古屋市中区新栄1-49-18
    時間:11時30分〜14時、17時〜23時
    *日曜・祝日は夜のみ営業(17時〜22時30分)
    休日:不定休

編集後記

今回の特集記事は「いいもの探訪」と、東海道新幹線沿線の観光情報を集約したサイト「Japan Highlights Travel」、東海道沿線の良質な情報を提供している雑誌「ひととき」が共同で企画、制作しました。

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※写真・イラストは全てイメージです。

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